2017年4月6日木曜日

雨と木曜日(123)

2017.4.6.


木曜日更新のエッセイ。
今回は、哲学書の打ち合わせ〜売れる自然科学系の本〜『ロラン・バルト 言語を愛し恐れたつづけた批評家』(中公新書)。


哲学書の出版に向けて打ち合わせをおこなう。新しい編集者の方とも顔合わせをした。初対面で開口一番「顔色がよくないね」と言われて、苦笑してしまう。だが、ざっくばらんなひとで話が面白い。詩人の田村隆一と面識があったという。田村は鎌倉に住んでいたらしいが、酒乱であったため、地元鎌倉の居酒屋ではどこも出入り禁止にされていたとか。不器用に生きたひとだったそうだ。田村隆一の顔色がよかったのかどうかは聞き忘れた。

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これもひとから聞いた話だが、自然科学系の本でコンスタントに売れるジャンルは数学だそうだ。最初になんでしょう、と聞かれたときはそのひとも「動物の本だろうか」と考えたりしたそうだが、なるほど、数学には僕も納得。大きな本屋では、数学関係の文庫がきっちり並んでいるコーナーがあるし、身の回りに数学好きのひとは3人くらい顔が浮かんだ。コンスタントに売れるには「固定客」が大事だから、数学ファンの層があるわけだ。

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『ロラン・バルト 言語を愛し恐れたつづけた批評家』(中公新書)という本が大変よかった。バルトは『表徴の帝国』(日本論)や『エッフェル塔』がとても楽しい読み物(哲学エッセイ)で、温かみを感じていた。上の本は、バルトの易しい評伝として、サナトリウムで肺結核と闘病した若い時代から、批評家としてのデビューと最盛期、そして母を亡くし、小説家を志す晩年まで描く。それに交えて著書の解説もわかりやすくまとめている。

没後401周年(?)で読んだ。台詞の訳がさすがに古い!
『ロラン・バルト 言語を愛し恐れたつづけた批評家』、石川美子、中公新書、2015
『ヴェニスの商人』、シェイクスピア、福田恆存訳、新潮文庫、1967