2017.3.9.
木曜日更新のエッセイ。
今回は、美馬牛駅まわりの立派な建物〜 バルザックは儲からない〜ヴィアン『うたかたの日々』。
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19世紀フランス小説の大家、バルザックはほとんど儲からなかったそうだ。耳学問で知った話なのだが。バルザックの小説はよく売れたし、当時、出版商業の波にもうまく乗った鋭敏な人物だったことも知っていた。しかし、彼には推敲癖があり、初稿が出版されてしまったあとも、印税を注ぎ込んで第二稿、第三稿とどんどん自費出版をしてしまうから手元にお金が残らなかった、と哲学者の木田元がどこかで書いているそうだ。
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ボリス・ヴィアン『うたかたの日々』を読む。映画化もされて、シュールレアルな世界が展開された(とくに「カクテルピアノ」を映像で観られるのは素敵だね!)。物語は、変な序文(きれいな女の子とジャズ以外は消えていい)付きで、楽天的、奇想天外に始まり、哀しく終わる。ラブレーを愛した作者だったようだが、若くして心臓の病気をもっていたこと、また、現代フランス流の小説規範にも照らしたのか、結末まで楽天家ぶりが続かない。26歳の作。
『うたかたの日々』、ボリス・ヴィアン、野崎歓訳、光文社、2011
* 訳、訳注、解説もよいと思います。