2017年2月8日水曜日

【ご報告】本のカフェ第39回@東京

日時:2017年2月5日(日)13-15時
場所:恵比寿 カフェ カルフール
参加人数:10名
参加費:1000円+ワンオーダー
(25歳以下、割引:ワンオーダーのみ)


今回は、<芸術>特集でした。とくに音楽について盛り上がりました。ケーキを頼んでいたひとも4人ほどいらして、楽しい雰囲気。


最初は、主宰の木村がアランの芸術論を2冊、紹介しました。文章は、一文一文が短く歯切れよい代わりに接続詞が少なく、脱線もあるので結果、読みにくい。モンテーニュらを継ぐスタイル。世界観としては、「情念」を抑え、「体」を使い、「礼儀作法」をわきまえることの大切さが根底にある。芸術観も同様で、とくに「貧弱」で「調子っ外れ」な「想像力」を「職人仕事」によって抑えていくこと、その結果、観る者に平穏が訪れると説く。


ふたり目の紹介者さんは、イベント「古楽かふぇ」を開催する方で、『中世音楽の精神史』。30数年前にラジオでチェンバロやハーディ・ガーディを聴いた思い出。10数年前にはアカペラ合唱団でマドリガルを歌い、古楽の道に引き込まれる。そのとき、勧められたのがこの本。中世ヨーロッパの歴史、哲学、文化などを音楽の方から概観できる。たとえば、「自由七科」のうち、音楽はいまで言う「理系」に割り振られていた。


三人目の紹介者さんは、レジュメを用意し、10冊の本を横断的に語ってくれました。書誌情報は最後に載せます。メインは『音楽の原理』。ぶ厚い本で、科学史、物理学史、認知、宗教史、アフリカ・アジアの古い音楽、演奏者の生活態度に至るまで触れる。ひとは、古代ギリシアから「音」の位置づけを考えてきた。音楽は、近代以降、自然科学と分離し、鑑賞される文化のひとつになったが、他方、宇宙のなかの調和といった広い視野で捉えられる機会が少なくなる。


四人目の紹介者さんは、三冊の本を紹介。「19、20世紀に確立された芸術概念」の前、中、後を観ていこうという趣旨。まずは、紀元1000年頃に製作された「聖ヨハネの黙示録」の写本。聖別され、神に捧げられたもの。金の彩色がなされる。次はボードレール『悪の華』に寄せられたルドンの版画集。これまた貴重な本。最後に、ページの最下部に一行の活版印刷がされたほかは白紙の本。ジョン・ケージにインスピレーションを与えた作者による。


とても充実した紹介の数々でした。それから30分ほどのフリータイムへ。とくに、8000円以上する『音楽の原理』や、印刷技術も特別なものを用いた『聖ヨハネの黙示録』(写本の複製)は、ふだん手に取って眺めるチャンスも少ない本。みなさん、あちらこちら席を移動しながら、楽しんでいました。

今回も、運営を手伝ってくださったOさん、貴重な本を持ってきてくださった紹介者のみなさま、参加者のみなさま、そして、SNS等で見守ってくださったみなさまに感謝申し上げます。


次回は、4月に<小説>特集として、馴染みやすい本の集まる回にしたい、と考えております。ここまで記事を読んでくださり、ありがとうございました。それでは、また!

主宰・写真:木村洋平
写真・受付:Oさん

【書誌情報】
アラン、『芸術の体系』、光文社、2008
アラン、『芸術論20講』、光文社、2015
金沢正剛、『中世音楽の精神史』、講談社、2015
近藤秀秋、『音楽の原理』、アルテスパブリッシング、2016
 ピーター・ペジック『近代科学の形成と音楽』(NTT出版)
 浦久俊彦『138億年の音楽史』(講談社現代新書)
 ボエティウス『音楽教程』
 アタナシウス・キルヒャー『普遍音楽ー調和と不調和の大いなる術』(工作舎)
 (原著 "Musurgia Universalis" はIMSLPのサイトでダウンロード可能)。
 岡田暁生『西洋音楽史ー『クラシック』の黄昏』(中公新書)
 村田千尋『西洋音楽史再入門ー4つの視座で読み解く音楽と社会』(春秋社)
 大串健吾『音のピッチ感覚』(コロナ社)
 ヘルマン・フォン・ヘルムホルツ『音感覚論』(銀河書籍)
『聖ヨハネの黙示録』(写本の複製)
『悪の華』(にインスピレーションを受けたルドンの版画集)
レミー・シャーリップ作、『雪が降っている』タムラ堂

* 一部の省略あり。すみません。