2017年1月1日日曜日

中公新書をおすすめ

中公新書は、大学の教養課程で教科書として使えそうなタイプの硬派な良書を揃えている。とくに最近その傾向が強いようで、読んでよかったものをご紹介。


とくに素晴らしかった3冊はこれら。

『天使とは何か』岡田温司(2016)
 西洋美術・思想の研究者で自由な筆を揮う岡田さんらしい幅の広い天使論。遊び心がある。神学的な議論ではなく、異教に目配りし、プットー、ダイモン、サタンとの曖昧な境目を探る。また、キリストが「天使」とみなされた話、ルネサンスの音楽論なども。

『ラテンアメリカ文学入門』(2016)
 ほぼ20世紀と重なる100年間に隆盛を誇ったラテンアメリカ文学の概論。ボルヘス、コルタサル、ガルシア・マルケスら、いわゆる「純文学」を軸に据える。彼らの実生活での交流も創作の大きな原動力となったことがわかる。視野は広く、目配りが利いている。

『文明の誕生 メソポタミア、ローマ、そして日本へ』小林登志子(2015)
 古代シュメル文明について、市壁と都市国家、経済、文字や馬といった基本的な要素を丁寧にチェックする。ローマや日本は比較材料として盛り込まれ、面白味を増す。なかなかぶ厚い。

そのほか、良質だと感じたのはこういった本。

『シェイクスピア』河合祥一郎(2016)
 シェイクスピア研究の第一人者で、翻訳にもすぐれる河合祥一郎さんの本。伝記と作品分析。よくわかっていない生い立ち〜ロンドンでの活躍開始の期間についても詳述するが、学術的な議論に深入りの感もあり。「シェイクスピア・マジック」の章が面白い。
 
 『近代哲学の名著 デカルトからマルクスまでの24冊』熊野純彦編(2011)
 1冊あたり10ページないくらい。名著ごとにひとつのトピックを絞って論述する感じ。コンディヤック、マイモン、フォイエルバッハといったちょっとマイナーどころを押さえられるのがよかった。シリーズで『現代哲学の名著』もある(未読)。

幅広く学びたい方にはおすすめしたい中公新書。