2016年12月8日木曜日

雨と木曜日(108)

2016.12.8.


木曜日更新のエッセイ。
今回は、再会とノマドワーク〜サードウェーブとドトール〜『歩道橋の魔術師』。


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大学時代の先輩と会う。いまは専任講師として大学で働いている。僕よりもだいぶ年上の方だが、フリーで仕事を掛け持ちしていた頃は、病気になれない状態だった、と。ご家族の話もあれこれ。なお、翻訳業もかなりなさっている方だったが、どんな風に作業をしていますか、と聞くと、家では捗らないから、原稿(印刷)とノートパソコンをもってカフェにゆく。疲れたら、場所を変える。というノマドワークらしい。有効なんだね。


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コーヒーのサードウェーブも都心では馴染みが出てきた頃ではないかと思う。ブルーボトルコーヒーが代表格。産地を明記してシングルオリジンと呼ばれるひとつの種類の豆だけで、ストレートで淹れるスタイル。ハンドドリップの姿をお客さんも楽しみながら、高いテーブル、主にスタンドで一杯飲んで、すぐに店を出る。さて、シアトル系(スタバやタリーズ)よりはたしかに美味しいが、値段が高いし、僕はドトールのブレンドの方が好きかも。

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『歩道橋の魔術師』を読んだ。ずっと気になっていた作品で、翻訳大賞の候補作にもなり、ジュンク堂では平積みされ、翻訳家の金原瑞人さんはYA、児童文学としてもおすすめしていた。舞台は70,80年代とおぼしき台北。著者が少年時代を生きた商場。当時の息吹が伝わるなかに、現実を超えたマジシャンが登場し、物語にねじれを持ちこむ。ただ、村上春樹と江國香織を足して二で割ったような作風で、世界中、流行りはみな同じ、という気も。

『歩道橋の魔術師』、呉明益、天野健太郎訳、白水社、エクス・リブリスシリーズ、2015