2016年12月15日木曜日

雨と木曜日(109)

2016.12.15.


木曜日更新のエッセイ。
今回は、クリスマスカードの贈り方〜ノンカフェインのブーム〜バルザック『知られざる傑作』。


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クリスマスカードの季節。日に日に寒さが増して、小川の光もおずおずと控えめになる冬至前。今年お世話になった方々、ちょうど読み終えた本やCDを贈りたい友達、親切な親戚、海外の友人、かぎられたひとになるが、クリスマスカードを書く。使うのは万年筆で、お気に入りの「紺碧」(色彩雫)のインクを入れて。フォーマルな方がよい相手には、年賀状を送る。実のところ、きちんとした区別はないが、ふと思い起こして書く。

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ノンカフェインの飲み物が、カフェに普及してきた。この一年はとくに。スタバは、もともとハーブティーがあったものの、新しいTEAVANA(ティバーナ)シリーズでカモミールが加わった。ドトールは、札幌のとある店舗ではノンカフェインコーヒーを提供していた。東京の店舗では、提供はなく、ドリップパックのみ見かけたが、ルイボスティーがメニューに加わっている。妊婦さんや授乳中の方にも、カフェインに弱いひとにもうれしい。

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このところバルザックを立て続けに読みたくて『知られざる傑作』を手に取る。短編集で、表題作の「知られざる傑作」は芸術論を扱う。わかりやすい構成と、バルザックが「人間喜劇」シリーズ全体に込めた「情熱こそ人間の奥底にあり、芸術を作りもすれば、破滅もさせるもの」というメッセージが端的に表れている。他方、一番気に入った短編は「ざくろ屋敷」。バルザックの幼少時代や恋愛遍歴の体験が色濃く反映されて、密度がちがう。

『知られざる傑作』、バルザック、水野亮訳、岩波文庫、1965(改訂前の初版は1928)