2016年11月24日木曜日

雨と木曜日(106)

2016.11.24.

木曜日更新のエッセイ。
今回は、80年代の大学院の話〜珈琲文学の続き〜ナルニア国物語。


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恩師から聞いた80年代の大学院の話。教室へ行ってみると誰もいない。そこで、教授の研究室にゆくと、「初日はやらないから。ああ、あと僕はこれからアフリカにしばらくゆくから」。それで、学期末も近くなった頃、初めて授業にゆくと、一部の学生にだけ手渡された英語論文があり、その発表も途中で終わる。「これからがいいところなんだけど、まあいいか」。それでレポートを出して終わり。あの頃の大学は自由で楽観的だった、と。

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前回、珈琲文学の続き。珈琲の風味をいかに表現するか、という「文学」。今回は、ロサンゼルスに2015年に誕生したばかりのヴァーヴより。"COFFEE IS A FRUIT" がモットーのよう。「シトラスとベリーの特徴が絶妙に調和した、作りたてのサングリアのような」「オレンジシャーベットのような爽やかな甘みと、キウィフルーツのような酸味が」「チェリーコーディアルのような丸みのある味わい」。etc...


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左が普及版(白黒挿絵)。右が挿絵カラー版。

ナルニア国物語シリーズを5冊/7冊、読んだ。ファンタジーの原点のひとつで、『指輪物語』のトールキンとも交友があったC.S.ルイス作。宝物をため込む典型的な竜の登場などは、トールキンに通じる初期ファンタジー作品の観あり。ハリポタのような映画的な文体を取らず、視覚に拠りながらも、田園風景ののどかさに通じる平和を描く。キリスト教の影響が強いと言われるが、直接的な寓話にはなっていない。オリジナルな世界観と言える。

【書誌情報】
ナルニア国物語シリーズ(全7巻)岩波少年文庫
* なお、光文社古典新訳文庫からもシリーズ刊行中であり、現在は2巻まで出ている。光文社のシリーズは、原作の刊行順ではなく、原作の物語内の時間順であり、物語の順序を追って読むにはこちらの方がよさそう。1巻目の『魔術師の甥』はよい新訳だと思う。