2016年9月22日木曜日

雨と木曜日(98)

2016.9.22.

紅葉するななかまど(赤い実)

木曜日更新のエッセイ。
今回は、塔の上のラプンツェル(ディズニー)〜お気に入りのカップを割る話〜『火垂るの墓』野坂昭如。


「塔の上のラプンツェル」は2010年のディズニースタジオ作品。古典的なお姫様と王子様の物語としては、最後かもしれない。この後に「アナと雪の女王」(2013)が姉妹愛をテーマに据え、「ズートピア」(2016)では社会の正義や公平が扱われて、恋愛は姿を見せない。ずいぶん、2010年代の変化は大きい。ところで、半眼でスカした感じの男性主人公は、「ラプンツェル」から「ズートピア」のキツネに受け継がれたのかな。

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お気に入りのコーヒーカップを割ってしまった。片手でしまおうとしたのが運の尽きで、ソーサーの上を滑ってがしゃん。長らく愛用してきたのだが。薄い造りなのがよく、口当たりがやさしい。味がよく伝わる。函館のふらりと立ち寄ったアンティークショップで買った。とはいえ、リサイクルショップのようなカップコーナーで一脚600円だったか。いまは製造されていないモデルで、薄い緑のデザインもよかった。残念。

これはまたべつのカフェの風景

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『火垂るの墓』を読んだ。野坂昭如を読むのは実は初めて。関西風なのか、乾いた語り口で冗舌に読点もなく続く長い文章は、短編に迫力と凄みを与えている。表題作、「火垂るの墓」と「アメリカひじき」が直木賞。「アメリカひじき」は、戦後20年以上経って、いまだアメリカ文化にコンプレックスの抜けない男が、紅茶を乾物の「ひじき」だと思って煮出すエピソードから。ほかの短編も京都、神戸、大阪、新潟の少年の姿を捉えて圧巻の筆力。

【書誌情報】
『火垂るの墓』、野坂昭如、新潮文庫、1968