2016年8月4日木曜日

雨と木曜日(92)

2016.8.4.

木曜日更新のエッセイ。
今回は、札幌の短い真夏、クーラーのない喫茶店〜相田みつをコーヒー〜『ムシェ 小さな英雄の物語』。


札幌もいよいよ短い真夏に突入した。空気も湿度をはらんで、もやもやする。一週間ほど真夏日が続く予報をみると、「関東ではなんてことないけれど、北海道ではこれが真夏なのだな」と思う。「お盆を過ぎれば秋」という言葉もあるくらいだから、むっとする快晴も味わっておこう。ところで、クーラーのない喫茶店というものに初めて(?)入って、北の夏の風情を味わった。扇風機でなんとか涼みながら、ホットコーヒーを啜る。

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相田みつをコーヒーというものをいただいた。とあるおばあちゃんから、「わたしはコーヒーを飲まないので、いただきものだけど……」と贈答品をそのまま。群馬県桐生市に販売元がある。相田みつをの言葉が印刷されたドリップパックなのだが、コーヒー豆の産地にちょっと驚いた。ふつうは「ブラジル、コロンビア、モカ、インドネシア」などが並ぶのに、「ブラジル、エルサルバドル」とある。中南米の酸味が爽やか。「ありがとう」。

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『ムシェ 小さな英雄の物語』を読んだ。第二回日本翻訳大賞の候補作。スペインはバスク地方出身の作家による、戦争文学。スペイン内戦でベルギーへ疎開させられた子供、その子供を引き取った主人公のムシェが、ナチスに対するレジスタンス活動を始め、強制収容所へ連行される。半ばノンフィクションであり、歴史資料のような文体もとるが、あえて「小説」として執筆。小説ならではの警句や友情、愛情の表現と歴史性のバランス感覚が見事。

【書誌情報】
『ムシェ 小さな英雄の物語』、キルメン・ウリベ、金子奈美訳、白水社、2015