2016年8月18日木曜日

雨と木曜日(94)

2016.8.18.


木曜日更新のエッセイ。
今回は、いぐさのブックカバー〜リチャード・ジノリのデミタスカップで〜芥川賞『コンビニ人間』。



いぐさのブックカバーをいただいた。本にかぶせるともこもこして、掴み心地はわしわしする。なにより敷き立ての畳の匂いがするのがGOOD. こんなに面白いブックカバーにはそうそうお目にかかれないのでは、と思う。感謝。富士山の模様が刻印してあるのも、なにやらゆかしい。いまは、中国名詩選の中巻をくるんでいる。縦に余りが見られるが、ひょっとして新書サイズなのだろうか。でも、きっと文庫がふさわしいだろう。

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リチャード・ジノリのカップ。この真っ白なカップ(写真)は、イタリア語で「古い」を意味するベッキオシリーズだ。18世紀から受け継がれている。「珈琲とお菓子 つぐみ」という喫茶店では、ジノリのカップをよく使っている。フルーツの描かれたカラフルで繊細なものも有名だが、この真っ白さには感じ入った。凹凸の模様もなめらかで、でこぼこで、手作りの味わいがしっかり伝わる。デミタスカップで少なめの珈琲をじっくり。

フルーツ柄

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芥川賞受賞『コンビニ人間』を読んだ。現代日本のムラ社会的な側面をえぐり出す日常のシーン。就職や結婚ができない「異物」は排除される、縄文時代から変わらない心性。なんて、書くといかにもなテーマで怨恨を感じるが、この作品が面白いのは、テーマも登場人物も極端に描かれて、戯画化されて、「こんなひとも台詞もあからさまに小説のなかでしか存在しないだろう!」と思わせるユーモアである。喜劇として読むと笑えてしまう。

【書誌情報】
『コンビニ人間』、村田沙耶香、文藝春秋、2016