2016年8月3日水曜日

【ご報告】本のカフェ第35回@札幌

日時:2016年7月31日(日) 14-16時
場所:詩とパンと珈琲 モンクール
参加者:15名
参加費:1200円(パン、アルコール、ソフトドリンク付き)


今回は、6月のお休みを挟んでふた月ぶりの開催。「ファンタジー推奨」としました。さっそくミヒャエル・エンデの『はてしない物語』の紹介からスタート!



「ハイ・ファンタジー」の要素をもつ異世界中心の重厚な作品。ハードカバー版は美しく、赤字と緑字を使い分け、装丁もよい。紹介者さんが面白いと感じたのは、物語の後半、主人公のバスチアンが異世界に入り込んだあとの設定。願いをひとつ叶えるごとに現実世界の記憶をなくしていく。作者のエンデは「現実逃避としてのファンタジー」を好まなかったというが、自分じゃないものになろうとして周りの大切なひとをなくしてゆくことへの警鐘か、と。


二冊目は、『向田理髪店』。苫沢町という架空の炭鉱町が舞台。財政破綻している。夕張市の破綻から10年が経とうとしているなかの出版。ところが、内容は深刻な社会情勢を描くものではなく、あくまで町民の人間模様を描いたどたばた劇。ご近所さんの介護、農家の跡取りにやってきた中国からの花嫁、離婚して町に戻ってきたスナックのママらが、田舎ならではの情景をくり広げる。コミカルなタッチで読みやすいとのこと。


三冊目は、森見登美彦『ペンギン・ハイウェイ』。日本SF大賞受賞。郊外に森のあるありふれた町にペンギンが突如現れる。掴まえると消える。次から次へ不思議なことが起こる。主人公は小学四年生の男の子で、彼の語りで始まるが、冒頭の一文からユニーク。彼は、ペンギンの研究、学校のガキ大将の研究、川の源流を記録するなど、なんでも研究ノートをとる。本書は1〜3ページずつで区切りがあり、すらすらと読める作品である。


四冊目は、川上弘美の短編集『おめでとう』。短い作品なので、また、紹介者さんの心に深く残った作品とのことで全文を朗読してくださった。散文詩のよう。未来の日本のお正月、「おめでとう」の言葉は交わされるがさみしい風景。SFらしい雰囲気もあり、理系出身の川上さんらしいのか。川上さんは、芥川賞受賞の5年後に『センセイの鞄』でヒット。「おめでとう」もこの時期の作品。なお、「神様」と震災後の「神様 2011」のセットもおすすめ。


15時過ぎにフリータイムに入りました。和やかで穏やかなムード。アルコールは今回、さほどはかどらず、みなさんアイスコーヒーを飲んでいました!ジュースもおいしく。夏ですね。


今回「ファンタジー推奨」としたものの、参加者さんからのご質問で「ファンタジーってそもそもなに?」という疑問が出されました。参考記事としては、佐藤さとるさんの『ファンタジーの世界』を読んでまとめたこちらの記事をリンクしておきます。


前日からアイスコーヒーを仕込んで、美味しいパンの数々を提供してくださったモンクールオーナー、遠方からの方も含め、参加者のみなさま、SNSで応援してくれたみなさま、ありがとうございました。

主宰・文責・写真:木村洋平