2015年12月20日日曜日

「旅は生きること…」


とある旅をテーマにしたアニメで、旅人が主人公を諭す場面がある。主人公はあとさきを考えず雪山に入って遭難してしまうが、助けられる。旅人は言う。「旅をするとは生きること。それを知らない者の旅にはなんの価値もない」。


この文脈では、「旅をする覚悟というのは、生きて帰って来ることの覚悟」という意味だ。妙に印象に残っている。

旅先というのは、非日常なので無茶をしたくなるし、はめをはずしたくなる。もし、人生を旅になぞらえるなら、レールや世間から逸脱したとき、なげやりになったり、たががはずれて、自殺が頭をよぎることもある。

けれども、旅人は必ず帰って来なければならない。故人たちの詩を思うが、「もしかしたら故郷を再び見られる」また、たとえば「そこで妻に会える」(柿本人麻呂)といった思いをいだいて、ひとは旅に出てきた。

そうして、Home(我が家、故郷。"The house is not home.")に帰るか、たとえ故郷を失っても、安心を得られる場所へ、ひとときでもまた休める時が来ると信じて旅に出る。

この感覚をなくしてはいけないのだ、と思う。旅は、ときどきセイレーンの歌のようにひとを魅了する。そこには、旅先でどうなったってかまわない、野たれ死んだって、というような、諦めや果てしない逃走の誘惑がある。

それを退けて、「生きて帰る」ために自分を律して旅を続ける、という覚悟が旅にはいるのだろう、と考える。