2015年8月17日月曜日

【古楽ラノベ】こがくりお〜第十二幕「ゆる古楽部のひとコマ」

第十一幕「恋バナ☆ルネサンス」よりつづく。


あらすじ:国際自由学園に入学し、ゆる古楽部を立ち上げた佐藤りゅーと。なんだかよくわからない仲間が揃い、4人で部室に集まる……。


***

こうして、ゆる古楽部は4人になった。部長の俺、佐藤りゅーと。アラビアにくわしい森田ウード。関西弁のからやん。そして、ルネサンス合唱部の山中タリス。

今日は初めて4人が狭い部室に揃った。とりあえず、雑談が始まる。
「タリス・スコラーズ知ってますか?」と、タリスがからやんに尋ねた。
「おう。でも、ヒリヤードの方が好きやな」とあっさり切り捨てるからやん。
「ああ!ヒリヤード・アンサンブルもいいなあ」
「せやろ」
なぜか夢見心地な表情の山中タリス。
「わたし、なんで山中ヒリヤードじゃなかったんだろう、名前」
「おかんに言うとき」
てきとうだろ、からやん。
「わたし、ポール・ヒリアーが好きなんです。ヒリアーがいなくなってからはちょっとなあ…」
「ポールに言うとき」
てきとうすぎるだろ。しかし、タリスは気にしていないみたいだ。懲りずに話しかける。
「ねえ、ヒルデガルト・フォン・ビンゲンって知ってる?」
「知らん」
「ドイツの女性作曲家でね、中世に活躍したすばらしいひとだよ」
「ふうん」
「興味なさそう」
「あるある」
どっちだかわからんな、からやんは。
「じゃあ、いまから歌いまーす」
おいおい、まじか。山中タリスが歌い出すと、ベートーヴェンのシンフォニーの着信音が鳴った。からやんの携帯だ。
「おお、いまゆる古楽部におんねん。ああ、それな、笑かすで。わかっとるわかっとる、またあとでな」
タリスが歌い終わった。「ね、聴いてた?」
「聴いてたで。よさそやねんな、ヒルナンデス」
「なんでテレビ番組になってるの!聴いてないでしょ!」
「いや、ちゃんとミまで聴いてたわ」
「それ最初の音だよ!わたしもうゆる古楽部やめま……」
「ちょっと待った!待て、やめるなタリス」
俺はあわてて間に入る。
「せや、払った部費もったいないで」
「おまえのせいだろ、からやん!もっと真面目に引き留めろ」
「ゆる古楽部やめるゆうたら、おかん泣くで」
いや、たぶん泣かない。わいわいがやがや。そこへ、森田が隣のアラ部からウードをもってきて弾き始めた。ジャリーン。ジャラララ……。

ほんとゆるいっていうか、この部活なにがしたいのか、わからなくなってきたぞ。

つづく。