2015年4月29日水曜日

本屋のこれから


本好きのひとりとして、素人ながら本屋のこれからを予想してみる。三つ、考えが浮かぶ。

ひとつはセレクトショップの台頭。ふつうの本屋とはちがって、書店員の目線で「これは」と思える本をセレクトして並べた、棚作りも品揃えも独特な本屋さんが増えてくるだろう。人口の少ない地方ではどうなるか難しいと思うが、都会や都心ではそうなると思う。

すると、小さなショップ(本屋)でも、セレクトの目線やただ単におしゃれな気分、ときには社会的なステータス(かっこよさ)を求めて、ひとが集まる。こういう本屋は、キャリアの長いユニークな書店員さんがブレーンとしてひとりいれば始められるから、若手を中心に加速していきそうだ。


ふたつ目は、街の本屋さんがイベントほかで人を集める、という動き。街の本屋さんはご存じのように数を減らし続けているが、どこかで底を打ち、方針を転換して持続すると思う。そのための条件は、「本」以外でも地域の人を集められること。

そもそも「街の本屋さん」というのは、1)流行りの新刊を揃え、2)雑誌が一揃い手に入り、3)(いまの時代なら)コミックがそれなりの分量あり、4)ふつうの文具が買える、そういう本屋さんだ。地域のひとたちがふらりと立ち寄れて、最大公約数が揃い、ITに弱い高齢者にもやさしい。

けれども、これだけでは「差別化」が図れない。みんな同じになってしまう。そこで、どんな風に「個性化」して集客するかが鍵になる。実際には、上の1〜4の条件だけで売り場面積をかなり取ってしまうから、ほかにできることはかぎられる。

アイデアとしては、「イベントによる集客」「カフェを併設する」「座り読みができる」「子供が楽しめる場所を作る」「溜まり場(地域のコミュニティ)になる」などが考えられる。

イベントは、トークイベント、サイン会などがすぐに浮かぶ。だが、たとえば、ご当地アイドルを呼ぶ、地元のミュージシャンが歌う、一部スペースを貸しギャラリーにするといったアイデアも、見たことはないが可能だと思う。

いずれにせよ、街の本屋さんは必ず需要があり、どんな地域にも(都会、地方を問わず)必要であるから、なんらかの手段で採算をとって、生き残らないとみんなが困ってしまう。それぞれに地域色や店主の個性を出しながら、「小さな多様化」を探っていくのではないだろうか。


三つ目に、大型店の行く末。大型のナショナルチェーン本屋さんがどうなるか。これは、業界のことをよく知らないながら、難しいだろうな、と思う。

とにかく、首都圏などの一部店舗を除けば、図書館のような大型書店を面白がる層は減る一方だろう。通販も電子書籍もあるのだ。大きめの地方都市でも、ターミナル駅そばの好立地で、売れ筋に主眼を置いて、やっと成り立つくらいではないか。実際、大型店の出店、失敗、撤退という無駄な動きをやると、地元の本屋さんもナショナルチェーンも両方消耗する。

大型のナショナルチェーンは、セレクトショップや街の本屋さんと同じく、ユニークな方策をあれこれ試し、工夫を凝らし、地域のニーズも汲み取ることができないと早晩、立ちゆかなくなる気がする。


これら三つのタイプの本屋さんについて、考えながら思うのは、小回りが利いて機敏な動きができる本屋、きめこまやかな行き届いた眼差しのある書店員のお店が残るのでは、ということ。