2015年3月30日月曜日

【本と珈琲豆】『グレープフルーツ・ジュース』


オノ・ヨーコの詩集、『グレープフルーツ・ジュース』。最初の版は日本語で1964年、次に英語で1970年。この講談社文庫は、写真を入れて英語版から訳したもの。



「地下水の流れる音を聴きなさい。」

から始まる。

「地球が回る音を聴きなさい。」

「世界中のすべての時計を二秒ずつ早めなさい。
誰にも気づかれないように。」

「一本の線をひきなさい。
その線を消しゴムで消しなさい。」

「絵を切り刻み
風にくれてやりなさい。」

「盗みなさい。
水に映った月を、バケツで。
盗みつづけなさい。
水の上に月が見えなくなるまで。」

「録音しなさい。
石が年をとっていく音を。」

最後の一節は、

「この本を燃やしなさい。
読みおえたら。」

この本にジョン・レノンが寄せた賛辞はこうである。

「ぼくがこれまでに燃やした本の中で
これが一番偉大な本だ。」(1970年)


ちなみに文庫の最後には、英語版が全文収録されている。このやり方はすばらしい。英語ならではのぐっと短い文、エッセンスを味わえる。

"Listen to a heart beat."
"Breathe."
"Draw a line. Erase the line."
"Cut a painting up and let them be lost in the wind."
"Drill a hole in the sky. ......"
"Promise"

などなど…。

素敵な詩集だと思う、ほんとうに。

【書誌情報】
『グレープフルーツ・ジュース』、オノ・ヨーコ、南風椎訳、講談社文庫、1998