東京の年の瀬から、今回の札幌便りは始まる。出版社との打ち合わせなど控えていたが、うまくゆかず。あれこれと困難の重なる。
いくつかの悲しみ深し十二月
気づけば、12月30日の夕空。
かばかりに夕陽まぶしき小晦日(こつごもり)
31日は池袋の炊き出しにゆくも、時間が合わずにこれまたうまくゆかない。体調をすこし崩して家路につく。
半月の落ちゆくほどに除夜の鐘
上弦の月が落ちるほど除夜の鐘は深まる。
正月はふつうのひとになりたしや
いろいろと変わった人生の半ば、半ばにも足らず。たまには「ふつうのひと」を願うも俳諧のおかしみであってほしい。
ゆく凧に下げられている子供かな
いかにも可愛く、「アナと雪の女王」の柄の凧を(親御さんに)揚げさせられているが、ぼんやりと立ってしまう。
鳩一羽一羽きりにて枯野ゆく
土の上を歩いてゆく。
おじいちゃんひとり坂ゆく初詣
自分の祖父を思えば、ひとり坂をのぼるも、背中に悲しさ背負いしかと感じ入る。そのあたり、近所の道をゆけば、子供のいたずら書きも見つかる。
元日の朝にチョークでたちつてと
この「たちつてと」は、夜まで残っているだろう。家の前の川はいつも通り穏やかに流れている。
川よりもゆっくり歩け冬の月
そして、また枯れ木のうえに見上げる月は。
枯枝にかかりて青の月まどか
どうして東京の空は冬にこうも青いのか。翌日、川には青緑の小鳥を見つける。
着膨れてしゅっと翡翠(かわせみ)見かけたり
しゅっと飛ぶ様は寒くないのだろうか、翡翠は涼しい笑顔。
ヒヨドリを置いて立ち去る川原かな
川原の枝に止まったヒヨドリとふたり、佇んでいたが、僕がさきに立ち去った。ほんの2メートルほどの距離であった。
霜の上立てるゆかしさ東京や
東京を喜ぶ。霜の上に立つ、というのは北海道では難しい。すぐ雪に埋もれてしまうからだ。そんな札幌へ帰って来た。
ソーサーに砂糖こぼれて雪化粧
もちろん、と言うべきか、コーヒーカップの乗ったソーサーである。茶器にもこだわってしまう。
オレンジの灯やさし雪あかり
札幌の一月もこれまた好きだ。