2014年11月12日水曜日

【エッセイ】カフェと読書


家で読書をしていると、本のなかに入り込みすぎて、こわくなるときがある。集中力が強くなり、本のなかに没入してしまう。はっと本の外へ出てきて、水のなかから飛び出したように息を吸い込み、本を閉じる。

カフェではその心配がない。カフェの席は、適度なノイズに囲まれている。いくら本を読んでも、半ばは外の世界への配慮がはたらく。

以前、ミヒャエル・エンデの『はてしない物語』をハードカバーで読んだ。場所はスターバックスだった。落ち着いた店内。

ぼくはあまりに物語に引き込まれ、途中で泣き出してしまいそうになった。それでも、おそろしくなって本を閉じなくてよかった。回りには談笑するひとや笑顔でコーヒーを飲むひとがおり、ぼくも外の世界に半分は属していたからだ。けれども、涙で文字が読めなくなったので、諦めて家へ帰った。

それから、ネイティブ・アメリカンについて書かれた本もカフェで読んだことがある。ほんとうは赤茶けた大地のうえか、せめて雑木林の公園のなかで読んだ方がよかったかもしれない(そうしたこともある)。

そういうわけで、心を揺さぶられそうな本を読むときには、落ち着きを求めてカフェにゆきたくなる。