2014年8月28日木曜日

【俳文】札幌便り(22)

夏期三景。まずは公園。

なわとびと虫取り網の置き忘れ

駅前。

提灯も色褪せておりビヤホール

床の上。

また今日も夕焼けこやけ窓の外

今年の夏はことに短い。平年はお盆を過ぎた頃に、と言うがお盆の前にすでに涼しい。

立秋やなにかの葉散る黄色いの

早い黄葉は赤みほとんどなく、きれいな黄に色づく。

草の葉は青し池には初紅葉
秋の蠅なにやらかまってほしそうな

夏ほどは勢いのない蠅がまとわりつく。

朝顔の一輪咲きや庭の先
スタバゆき新書を開く秋夜かな

「スタバ」はカフェ「スターバックス」。近年、札幌に店舗数が増える。次は、食べ物で二句。

新涼やちくわぶひとつくわえけり
玉葱も小ぶりになりぬ秋の風

近所のおじさんと会う。

パチンコへゆく目の笑みと盆の月

杉田久女の「紫陽花に秋冷いたる信濃かな」に触発されて二句。

人肌に秋冷来たるとある朝
紫陽花に秋色冴える札幌かな

いまもってあざやかな色合いの紫陽花を一輪みつけ、驚く。

開拓の碑のたからかに秋の園

公園へ。

白樺の葉のさわやかな丸みかな

お気に入りの句。白樺の緑も褪せてくる。さて、以下、「童話俳句」というものを試みてみようと思う。

露草の少しショックでうつむいて
鳩吹も鳴らねばいだすハーモニカ

鳩吹は、両手で吹く笛のこと。それが鳴らせないので、ならばとハーモニカを取り出す。

啄木鳥(キツツキ)の首かしげたるこのあたり
エゾリスも太らなくっちゃ冬支度

啄木鳥は「このあたりかなぁ」とちょろちょろ場所を変える。エゾリスは冬眠しないので、11月頃にはぶくぶく太る。

どんぐりのぽつりと落ちる音すなり
すずかけの木のおおらかに小鳥来よ

円山公園にはさまざまな木あり。桐一葉もあり、プラタナスは高し。

しわがれてカラスの鳴くも秋の声
とんぼうやどの根がやさしポプラの木

蜻蛉がポプラの根をどれが腰掛けやすいか、探すように飛ぶ。

腰掛けにどの色鳥の落し物
子鴨来てつんつく去りぬ水引の花

ベンチに白い跡。子鴨は池のほとりを歩く。水引の花は紅。

測量士いなくなってぞ鰯雲
ハンカチのどこかに落ちて草の花

ハンカチ一枚、落ちてくしゃっとなるのを見かける。測量士は、晩夏に仕事をなさっていた。

ちはやふる神代も知らず七竈(ナナカマド)

七竈に赤い実のなるが、まださほど色づかず。七竈は北海道の木なので、万葉の頃は知らないはず。北海道神宮は立派なお社だが、トイレも立派である。

神宮もウォシュレットなり秋深み