2014年4月3日木曜日

雨と木曜日(1)

 ある日、「雨と木曜日」という連載を始めようと思った。それはエッセイで、ふと思いついたタイトルなのだけど、日々の些細なことをおもしろく感じるところから書き出すものだ。小さなわくわくやほっとする発見、どうでもいいこだわり、目に光がともるようなことがら、そんなものを題材に読みやすい文章を書いてみよう——。

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 村治佳織の「ポートレート」をまた聴いた。有名な曲をカバーしたアルバムで、「戦場のメリークリスマス」から始まる。クラシック・ギターの音色で軽い音楽を聴きたくなるとこれをかける。最後の一曲はビートルズの「イン・マイ・ライフ」なのだが、僕は原曲の歌詞が好きで、レノンがヨーコに捧げた歌なのだろう、人生を振り返り(彼は30にもなっていない!)、だけどあなたを「イン・マイ・ライフ」で一番愛していると歌うところが、森林浴のような気持ちにさせる。
 
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 さて、円山公園のそばに「森彦」という札幌では有名なカフェがある。みごとな古民家カフェで、こだわり抜かれた内装に驚いてしまう。特注の道具を使ったネルドリップは、ぐっとくる赤ワインのような濃厚な珈琲だった。(ちなみに、少しカフェインに酔ったので黒ワインか。)ボサノヴァ風のBGMの合間に、ふっとバッハの無伴奏チェロ組曲が、それも管楽器で演奏されたものが流れてうれしくなった。ネジのついた時計がチクタクと鳴っていた。