2012年11月20日火曜日

【童話】ポトフの冒険

ポトーフ博士は、船で、イギリスからやって来ました。博士は、ふつうのPh(ピー・エイチ)ドクターではなしに、特別なPth(ポートーフー)ドクターの資格を、世界で初めて取った人でした。

ところが、博士と弟子たちを乗せた船は、大皿のなかで大きな薄緑色の山に乗り上げてしまいました。

「むむ、座礁したぞ。」博士はブイヨンスープの波をかぶりながら、弟子たちに言いました。「さあ、これから尋常でないポトフの冒険が始まるぞ。」

ポトーフ博士は、丸のキャベツを半分に切った山を見上げて言いました。「諸君、君たちはこのキャベツの山に登頂できると言うのかね?」弟子たちはぶるぶると首を振りました。

それからも、いろいろな素材にでくわしました。

「ああ!わたしとしたことが玉ねぎの皮ですべるなんて。」
透き通った玉ねぎの表面は、なめらかでした。

「わが愛しのマスタード、君だけが頼りだ!」
黄色いマスタードが、ちょびっと皿の縁に乗っていたのです。

「ふきが入っておる!」と、博士は驚きました。ルーペで拡大して、ぱくりとかじりつきました。「初夏の味じゃ。五月の風が薫らないだろうか?」

「とんでもないソーセージじゃ。ぷりぷりしておる。」
それは、ほとばしる肉汁とぱちんとはじけそうな皮のソーセージでした。

「だめだ、どれだけ掘ってもほくほくのじゃがいもよ。」
色の良いじゃがいもは、やわらかいのに煮崩れた様子もないのです。

そんなこんなで、ポトーフ博士とその一行は、大皿の半分も食べ切ることができませんでした。